打ち合わせ恐怖症

下っ端時代の話はまだまだあります。デザインを伴う制作物には打ち合わせが付き物です。
お客さまの制作物に対する希望をデザインイメージとして作るわけですから、とにかくたくさんの情報を制作者は欲しいと考えます。
キーカラーなど簡単な所から、雑談で聞かせてもらえた事柄をデザインに反映させた事などもあります。仕様に関する事なども疎かにすることは出来ません。
とにかくお客さまには気持ちよくたくさん話して頂いて1つでも多くの情報を仕入れたいと、制作者は全員考えていると思います。
情報が多ければ多いほどデザインを考える際の切り口(着眼点)なりますし、考える際の苦しみが少なくなります。

さて、下っ端時代はとにかく打ち合わせが嫌いでした。いや…嫌いというよりも恐怖でした。
少しは知識もついて打ち合わせに一人で出掛けるようになると、前日から不安で不安で仕方なかったのを覚えています。
お客さまの所へ向かう途中では手は冷たくなり、汗はびっしょり、いざ打ち合わせが始まれば足が震えてしまうほどでした。
きっと声も震えて挙動不審な人間に見えた事でしょう。もう打ち合わせどころではありません。
もうあの人を来させるなと言われた事もありました。
30年前の自分には何が足りなかったのでしょうか。
慣れ、経験もそうですし、自信も足りなかったと思います。全身から自信の無さが漂っていたと思います。
堂々と自分の意見を発言しお客様と対等にやりとりをしている先輩たちが輝いて見えましたし、自分との「差」の大きさにいつもがっかりしていました。

そんな自分も徐々にではありますが、この職業について5年を過ぎた頃から打ち合わせにも慣れて極度に緊張してしまう事も無くなっていきました。慣れてきた事もあると思いますが、
自分の制作物に対する自信が少しはついてきた事、
1から案件に関わって案件をしっかりと理解出来ている事
がお客様とのやり取りに恐怖を感じなくなった原因かな…と思っています。

30年この仕事を続けていますが、振り返って思う事は辞めないで続ければ少しづつ出来る様になるものだなと感じます。パッと出来るようになる魔法のレシピがあればいいのですが…まだ発見できていません。

蘇我別所梅林
写真は本文と関係ありません。(2023年2月末 蘇我別所梅林)